岩手大学 金型技術研究センター 特任教授 吉田 一人先生
2022/12/7
岩手大学様の金型技術研究センターは、金型設計者の育成、地域企業の金型技術に関する課題解決や技術力向上に貢献されています。そこで特任教授を務める吉田一人先生は、精密部品メーカーでの勤務を経て大学での講義や研究、地域企業の課題とのマッチング、さらに金型の分解や組み立ての実習などを担当されています。今回は金型技術研究センターでの取り組みや3D TIMON®の活用状況について、吉田先生にお話を伺いしました。
金型技術研究センターは、地域企業とともに世界をリードする金型技術の開発拠点を目指し、岩手県北上市からの寄付によって設立されました。金型に関する要素技術の研究をはじめ、地域企業との研究開発や、リカレント教育、学生向けの実践的教育まで、金型に関する技術を幅広く発信しています。
岩手大学には、大学院修士課程で金型や鋳造に関する技術を深く学ぶための大学院総合科学研究科地域創生専攻地域産業コース金型・鋳造プログラムがあり、金型設計、加工、成形などに関する講習を行っています。国立大学の大学院で金型に関するカリキュラムがあるのは岩手大学だけです。学生には勘と経験だけではなく、数値を用いたサイエンスの大切さを教えています。技術者の育成には数値を用いたCAEソフトの活用は必須だという考えから、2004年より3D TIMON®を導入し、金型グループの講習や、金型技術者レベルアップ講習に取り入れています。
講義の様子
大学が保有している技術や、研究している技術を地域企業の課題解決に役立てるため、北上市内の企業を訪問し民間企業のニーズをヒアリングしています。これまで地域コンソーシアム研究開発事業や戦略的基盤技術高度化支援事業などに採択され、民間企業とは毎年2件ほどの共同研究事業に取り組み、成形不良などの対策を実施してきました。今年度は経済産業省からの依頼で委託研究事業も行っています。
総合的な能力を持つ高度技術者を養成するための教育としては、研究開発から生産技術、経営までを一貫して理解できる高度技術者「岩手マイスター」の育成コースをはじめ、地域企業における技術者のレベルアップを図る講習を行っており、東北だけでなく関東圏からの受講者もいます。
また、U・Iターン者への教育も実施しており、金型や材料に関する総合的な技術教育により、民間企業では手が回りにくいワンランク上の教育を実現しています。
これらの研究や教育で3D TIMON®を活用しています。
3D TIMON®は操作が分かりやすいので教えやすく、理解してもらいやすいことから、学生でも操作に迷うことがありません。毎年参加しているインターモールド展の催しの一つである「学生金型グランプリ(主催:一般社団法人日本金型工業会)」では、学生が3D TIMON®を利用し成形や金型の事前検討をしてから、金型を設計、製作しています。昨年の名刺入れの課題では、形状を変更することで名刺の出し入れを行いやすくすると共にウェルドの発生を抑え、ゲート位置を目立たない箇所に設置するなどの工夫をし、グランプリ金賞を受賞しました。
また、3D TIMON®の解析に関連して疑問点や問題が起こった際、東レエンジニアリングDソリューションズには迅速に対応いただき助かっています。このあたりは国産ソフトの強みだと思っています。
CAEは日本のものづくり人材の育成、成形型を作る人間の教育に役立っています。CAEは使い込んで進歩させて、自分たちが使いやすいように使い込んでいくべきです。しかし、中小企業では使い込みが十分にできていないのが実状ではないかと思います。中小企業の皆様がお困りの際、こういうことを調べたいとなった際に、頼ってもらえるセンターを目指して、体制を作っていきたいと考えています。
インタビュー前に、金型技術研究センターの施設を案内していただき、マシニングセンターや放電加工機、射出成型機、プレス成型機の他、環境試験室など充実した設備を見学しました。向上心あふれる学生に教えることはとても楽しいと話す吉田先生の笑顔が印象的でした。
吉田先生をはじめ、センターの皆様にはインタビューにご対応いただき誠にありがとうございました。
営業本部 CAE営業部
2課
渡邉 究
営業本部 CAE営業部
2課長
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